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あけましておめでとうございます!研修医TYです。
昨年末に、神戸・三宮東遊園地にてホームレス支援のための炊き出し医療支援ボランティアを行いました!(良ければ職員ブログ
http://hyogo-min.com/staff/post-830.html もお読みください)
会場では、来られた方に医系学生ボランティアが「健康のことでお困りはないですか」と話しかけて、差支えなければ予診を取ったのち、僕たち研修医、内科スタッフ医師が簡単な問診や血圧測定、医療機関につながっているかの状況確認をしました。
そこで気になったのが、医系学生が話しかけると、「いや、いいです」と言葉少なに拒否する方や、「飯もらいにきただけや、健康や、いらん」という方が少なからずいたことです。
僕たちの目から見ると、そういう人こそ適切な診療を受ける必要がありそうに見えました。
反対に、一目散に医療ブースに来て、「薬くれ、かぜっぽい気がする、頭も痛い気がする、なんかくれ、あれもくれ」というような明らかに健康な方もいました。
これは微笑ましいというか、まあそれだけ元気な人はだいたい心配いらないですよね。
これと同じような事例について、京都の下町で戦直後から往診・在宅医療をやってきた早川先生が、以下のように話しています。
「だいたいね、おうちにいくでしょ、『先生どうぞ上がってお茶でも飲んでいってくれ、調子悪いわ、診てくれ』という家は問題ないんですよ。『また来るわ』って顔だけみて帰ります。
でもね、『うちは大丈夫です、悪いことない、みっともないから帰ってくれ』っていう家には、これは意地でもあがらないといけない。そういう家はだいたい汚くて、奥には寝たきりのお婆さんが寝かされていて、よそ様に見せるわけにはいかないから追い返すんですよ。僕たちはそういう人をほっとけない、そういう人を診るために往診していました」
また、「一病息災」という言葉があります。これは、ちょっとした病気のある人のほうがからだに注意するので、健康な人よりもかえって長生きする、という意味です。病院で働いていろんな患者さんを見ていると、この言葉を実感する場面が、少なからずあります。
持病がある方は、定期的に医者にかかる必要があり、それが健康リスクを低下させるのです。
たとえば、60代男性で、生来健康だったが、急な嘔吐で来院、精査により消化器の進行癌が発見された。
これはもし定期健診をするようなことがあれば、もっと早く発見することができたでしょう。
反対に、たとえば70代女性、糖尿病で月に一度外来、半年に一度画像検査のため通院。ここ数回膵管の異常がみられており、良性のものと思われるものの、経過を追って判断する必要がある。
こういうような場合では、手遅れになる前に膵癌などの異常を見つけられる可能性が高いです。
このような「病院に来ないが、真にニーズを抱えているような人」はおそらくたくさんいます。
それら全てに医療的介入をする必要があるか、資源的に可能なのかはさておき、医療者としては、そういった「普段の診療場面でみない」方々への感受性を高くする必要があります。
そしてそういった、「自分のニーズに無自覚な方々」は、あまりうまく表現できないのですが、「○○病予備軍」という疾病群としてまとめられるものとは、明らかに質の異なるもののように思うのです。
僕の勤務する東神戸病院や、100~200床規模の中小病院での初期研修では、このような視点を育ててもらえるのも、大きな特長の一つです。
なんか終始まじめな話で長くなってしまいました。
皆様にとって良い一年となりますよう!