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最後の演奏会

奈良の吉田病院で精神科研修中のjun1です。

 

前回の好きな番組に続いて、今回はお気に入りのCDのお話。

 

CDのタイトルは『ヴィルヘルム・バックハウス/最後の演奏会』。




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1969年6月26日と28日の2日間に渡り開催された、オーストリアのオシアッハにある修道院でのピアノコンサートの演奏がライヴ収録されています。

 

ヴィルヘルム・バックハウス[1884-1969]はベートーヴェン弾きとして、若い頃から世界的な名声を得ていました。

 

彼の弾くベートーヴェンは強い意志を感じさせる男臭い音色でありながら、しかし柔らかで繊細なタッチを堪能(たんのう)できる私にとっては至極の演奏です。

 

彼のベートーヴェンを聴くたびに、軟弱者の私は何か力が湧いてくる様な高揚感に満たされています。

 

しかしこのCD、実は冒頭のピアノ・ソナタ 21 ハ長調op.53 「ワルトシュタイン」 の第1楽章からミスタッチが何度も聴かれます。

 

普通ならこんなにミスタッチの多い演奏がCDで発売になるのは少し不思議な感じもするのですが・・・。

 

628日のベートーヴェンのソナタ第18番では、バックハウスは途中で気分が悪くなって(心筋梗塞を起こしたと言われています)第3楽章までで演奏を中断、観客に『少し休ませて下さい』と告げ、舞台の袖に下がります。

 

しばしの休憩の後、舞台に戻りプログラムを変更し、シューベルトの幻想小曲集と即興曲を弾きコンサートを終了したと言われています。

 

バックハウスはこの1週間後の7月5日、ケルンテンで85歳の生涯を閉じています。

 

このCDでは人生の全てをピアノに捧げた偉大なピアニスト(*)の人生最後の魂の咆哮(ほうこう)を聴く事ができます。

 

瑞々(みずみず)しい、まるで少女が弾いているかの様な切ない、聴いていて胸が詰まるような、それでいて幸福感に包まれる優しい音色、人生の最後の場面で彼が奏でる演奏を聴くたびに涙が出そうになります。

 

この演奏を聴いていると、ピアノの演奏においてミスタッチなしに弾くことなんて、どうでもよいとまで思えてくるほどです。

 

聴くたびに深い感動を覚えずにはいられない、そんなお気に入りのCDです。

 

 

         酒もタバコもやらず、教鞭は取らず、弟子も取らない、結婚もしない、ある時記者に「休日には何をされているのですか?」と聴かれ「ピアノを弾きます。」と無愛想に答えるピアノ一筋の人生を送った偉大なピアニストです。

彼の愛したピアノがベーゼンドルファー(欲しい!!!)



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