地域医療研修中の2年目研修医jun1です。
地域医療で往診に行くと、入院中や外来で出会った患者さんに再会することがあります。
先日も大動脈解離で転送になった患者さんと再会。
注意:以下、少々面倒臭い自慢話が続くので疲れている方は、後日疲れていない時にお越し下さい、すんませんm(_ _)m
私は今年の1月〜3月まで東神戸病院で救急&内科の研修をしたのですが、研修が始まって4日目の1月初旬のお昼過ぎに患者さんは来院され、入院となりました。
患者さんは80歳を越える高齢の方で、もともと胸椎圧迫骨折、変形性腰椎症もあり、日常生活動作は活発な方ではなかったのですが、年末から今年の始めにかけて、発熱、ふらつき、活気低下があり当院に救急車で来院&受診され、誤嚥性肺炎の疑いで入院となりました。
病棟にいると主治医の先生が患者さんと共に上がってきて、
「今胸部CTを撮りに行っていたのやけど、急に血圧が下がってね〜、ちょっと一緒にCT見てもらえる?」
とおっしゃるので、私も含め3人で胸部CTを見る事に。
肺野条件(肺の中を詳しく見る条件です)で見ていると、肺炎はそれほど酷くなさそうな感じ。
続いて縦隔条件(心臓、筋肉、血管など肺以外が詳しく見える条件です)で見ていくと、上行大動脈の中に白い線(*)が見えたので、『大動脈解離?』と思ったけれど、他の先生が何も言われないので一瞬自信がなくなる。
恐る恐る『上行大動脈が解離していないですか?』と言うと、『肺炎ばかり気にしていたわ、どれどれ?』ということになって、『確かに大動脈解離かも?』、と次の瞬間主治医の先生は血圧が下がった原因と大動脈解離が繋がって、外来中の循環器内科の先生のところコンサルトへ。
しばらくして、病棟に『転送、転送』と言いながら上がってこられて、近くの病院の循環器外科へ転送に。
先日もブログに書きましたが、転送は研修医の仕事。
緊急事態の転送だったのでかなり緊張したのを覚えています。
往診で再会した際、ご本人は転送時はぐったりしていて転送に私が乗って行ってことなど全く覚えていませんでした。
個人的に強く印象に残っている転送なので、気持ちの盛り上がり方がかなり一方的な再会でしたが、往診で訪れた際に元気そうな姿を見る事ができ嬉しい出来事となりました(患者さんはその日の内に大動脈を人工血管に置き換える大手術を受けました)。
普段から
『臨床の現場では、思ったことや気付いたことは、臆する事無く言いなさい』
と上の先生からよく言われます。
しかし、研修を始めると、何か言うたびに、『あ〜なるほど〜、でも先生それは正常だと思うよ、沢山見ていくとその内に解るようになるよ』とか『あ〜なるほど〜、まあでも余り有意な所見ではないかな〜』と言われる経験を沢山します。
自然、臆するようになりがちです。
『原因は何か』といわれたら、勉強不足が原因なのですが。
でも、この患者さんが元気に退院されて自宅で生活されているのを見るにつけ、あのとき臆さず言ってよかったな〜思うばかりです。
写真はその上行大動脈に白い線が見えているところです。
高齢になると血管壁に石灰化が起こり、血管周囲がCTで白く映ります。
大動脈の中には血液しかないのが正常ですから、大動脈の中に白い線が見える事は通常ありません。
しかし、このように大動脈内に白い線が見えているということは、恐ろしい事に血管壁が裂けている事を教えてくれています。
大動脈解離は命に関わる、場合によっては1分を争う緊急疾患です。
患者さんが助かってホントよかったです。