当院の研修では、2ヶ月を経た頃から、手術室で挿管の実習をさせてもらえます。
いきなり救急室で呼吸停止の患者さんに挿管する、などという事はなくて、必ずその前に十分に経験を積めるようになっています。
で、今年の6月に2人の新人研修医が手術室での挿管実習デビューする前に、人形で手順などをレクチャー。
その際、実際に挿管の手技をしようとしている二人を見て、私が思わず
「身体(からだ)の声を聴くように」
と発言すると、その場にいた他の先輩医師から
「なんか部活みたいやな〜(笑)」
と言われる。
笑われてしまったけれど、私は挿管や手技だけにとどまらない幅広く応用できる知識とか教養とかを伝えられたらと思って、上記の発言となりました。
具体的には、頭ではなくて身体で考えるということを少しでも伝えられたらと思っています。
たぶん余り伝わってはいないだろうことは予測がつくけれど・・・。
めげずに書きます。
挿管に限らず、何をするにも見た目に安定している姿勢でするかどうか、あるいは自然にスッと安定感のある姿勢を取れるかは、とても大事なこと、と普段から考えています。
普段なにげなく立っている時も、です。
それは仕事に限らず多くの場面で応用範囲の広い能力となるから、と私が考えているからです。
手技に限らず色々な場面で、安定した姿勢をスッと取る事できる、というのは大げさですが『人生において』重要な事、と個人的には考えています(大げさだな〜)。
そのためには身体の声を聞く事ができなければなりません。
そして身体の声が聞けるようになると、人生がずっとずっと楽しくなる、と私は考えています。
そして、具体的に身体の声を聞くというのはどういう事かというと・・・。
例えば、挿管が終わったときに、自分の身体を意識の上でスキャンしたなら、身体のどこかに違和感なり、筋肉の軽いこわばり、或は張りを自覚する事ができるはずです。
それはその部位に力が入っていたという事です。
或はその部位に負担のかかる姿勢で手技をしていたという事です。
何事も成功率を上げようと思ったら、力んではダメです、脱力するでも無く、どこかに力が入っているわけでもない状態で、お臍の少し下(丹田といいます)を意識し、安定した姿勢を取る事がとても重要です。
写真1:CVCシュミレーターで練習中の研修医T先生。姿勢が悪いし、見た目にも安定感がないですよね。あちこちに力が入ってます。ごめんねT先生。
そして、そのリラックスした状態で、両足にしっかりと体重が載っている事もまた重要です。
この事は、様々なスポーツでも同じですし、バレエの様な舞踏の世界でも、ビリヤードでも同じです。
何かをした後に、身体の声を聞く時、両足に均等にしっかり体重が載っていたかどうかも、聴く事が出来ます。
もし両足にしっかり体重が載っていなかったなら、なにかフワフワした感覚が、少し地面の遠いような感覚が残ります。
そして、上手く出来たと言うのは、手技の後で身体のどこにも違和感の無い状態ということです。
そして、そのような時は、身体の声を聴くまでもなく、全身が気持ちよい感覚に包まれています。
この感覚が解るか解らないかで人生大きく違うと思うのだけれど・・・余り伝わらないかな〜。
でも、身体の声が聴けるようになったなら、聴けない頃より、手技も少しは上手くなるはずです、きっと。
人生は凄く楽しくなること請け合いです。
写真2:指導医が風邪気味なのでインフルエンザの検査のやり方を初体験させてもらっている研修医T先生。楽しそうですよね(*^o^*)
ではなくて、指導医の肩に手を載せていて姿勢が安定しています。しかし、指導医も身体を張らなきゃいけないから大変ですm(_ _)m