Kさんの思い出
内科後期研修医のjun1です。
尼崎医療生協病院の院内メールで、昨年、一昨年も回って来たメールが今年も回ってきました。
内容は
『外部の業者が、あの手この手で研修医の院内用携帯電話の電話番号を聞き出そうとするので、注意してください』
というものです。
あの手この手の具体的な内容は書きませんが、要はオレオレ詐欺と同じようなもので、電話口の人間に考える間を与えずプレッシャーをかけて、軽いパニック状態にして、情報を聞き出す、という遣り口です。
新卒研修医が働き始めて『最初のお給料が出る頃』になると、この手の詐欺まがいの電話がかかってきます。
で、何週間かすると仕事中に突然院内専用の携帯電話が鳴り、
『◯◯先生は、節税対策はどうされておられますか?ぜひ私共にお手伝いさせてください』
といった内容をまくしたてる電話がかかってきます。
ま、即刻お断りするのですが。
この手の電話で引っかかる医師というのが何人いるのでしょうか?
私は医学部在学中に、東神戸病院の当直事務のバイトをしていたことがあります。
土曜日の13時から日曜日の朝の9時まで、受付で電話対応、カルテ出し、時間外の会計(預かり金を頂戴します)、朝に外来の新聞の架け替え、夜間の見回り、などなど受付業務以外の雑多な仕事をこなすバイトをしていました。
3食のご飯付き、2人体制で休憩も取れますし、まとまったバイト代も手にでき、医療現場(&事務職の大変さ)も体験できて、学生のバイトとして、ためになるバイトでした。
しかしバイト中にこの手の電話(土地、マンション、株etcの販売)がホントよくかかってきました。
電話に出ると、いきなり
『当直の先生につないで』
『神戸大学の医師だが、当直の先生に電話つないでもらえるかな』
などと高圧的な物言いで言ってきます。
この手の電話は慣れてくると、『アッ、販売の電話だな』というのが解るようになります。
どの電話も自分の素性について名乗らない、嘘をついている後ろめたさから物言いが高圧的、といった特徴があります。
というより、なんとなく『胡散臭い』んです、ホントに。
で、
『まず、名前と所属を名乗って下さい』
『どのような御用件での問い合わせでしょうか』
『御用件の内容を医師に確認してからでないと、電話は取り次げないことになっています』
などとマニュアル通りに対応すると、ガチャン、と切られます、100%。
私などは小心者なので『アッ、業者の電話だな』、と内心思いながらもマニュアル通りに対応するのですが、いつも私と一緒にバイトに入って優しく指導して下さった70歳代の当直事務バイト歴10年以上のKさんは、凄かった。
私の隣で、Kさんが電話対応中にいきなり、
『ホントのこと言うてみ?』
『いやだから、そんな嘘言わんと、ホントのこと言うてみって?』
と、電話対応マニュアルには絶対に載っていない対応を披露して下さいました。
『あっ、切りよった。ま、ホントのこと言うても繋いだらへんけどな。』
と、勝ち誇った表情で受話器を戻しはった時のことは忘れられません。
いや~、これぞプロフェッショナル、断定口調で話す、って凄い。
豪快で胸がすく対応でした。
是非、今度は私も女の人に、じゃなかった胡散臭い電話の相手に言ってみたい。
『ホントのこと言うてみ?』
これが院内専用の携帯電話