トップページ> 研修医ルーム > 4月から先輩になる研修医の先生達へ「危険な誘惑に負けるな」の巻 (>人<;)
後期研修医になると初期研修医の指導も行うのですが、今回はその時のエピソード。
後期研修医になり、私なりに教育について色々と考えることが増えてきました。
教育ってホント難しいと感じますが、面白みもあります。
難しいからと言って書店で、『部下との付き合い方』系の本でも買おうかしら?と思った事は微塵もありませんm(_ _)m
しかし研修指導というのは、研修指導ということを学ばなければ上手くできないものだと考えています。
そんなことを考えていたら、1年程前の後期研修医になりたての頃のことを思い出しました。
当時、初期研修医1年目のO先生が救急研修中の頃の話。
O先生も救急室で大分動けるようになってきたころで、著明な黄疸の患者さんを前に自分で腹部エコーを当て始めました。
黄疸があるという事はお腹の中で何かが起こっている可能性が高いからです。
そんなO先生が腎臓を上手く描出できなくて苦労しているので、代わりに先輩面して、『ほらね』っと腎臓を描出。
腎臓は動かない臓器なので描出自体は慣れたら簡単です(^◇^)
続いて脾臓を出そうとしたところで、なかなか脾臓が描出できない(p_-)
脾臓も動かない臓器なので、脾臓があるあたりにエコーの器具を持って行ったら出るはず、なのに出ない・・・。
さっき腎臓を出した時に勢いで先輩面しちゃったから、脾臓も出せないと格好が付かないな~、などと考えながら画面を見続けるけど、なかなか脾臓が写らな~い。
『ここに(左の脇腹)脾臓があるはずなんだけど、無いな~』
などと言いながら、なんとなくコレじゃないの?と画面を見ながら言いそうになるが、やはりはっきり画面に写らないので、
『脾臓は見えなかった』
ということで描出するのは諦めることに。
(補足:エコーの画面はCTのようにはハッキリ写らないことも多いのですが、CTのように放射線も浴びないし救急室で直ぐにできるので、検査の有用性はなかなか高いので、救急室では良く使用します)
で、その後に腹部CT検査に行く事に。
時を同じくして、午後の救急担当の先生が来られて午前担当の私と交替。
O先生は引き続き救急室で先ほどの患者さんを診る事に。
午後から病棟で仕事をしていると、O先生が近づいてきて、
『jun1先生、先ほどの患者さんの腹部CT見ましたか?いや流石ですね~、さっきの人は脾臓を摘出されていました。先生の判断で間違ってなかったですね~。』
と言われ、なんと危うく無い脾臓を、
『これじゃないの?』
とか言ってしまうところでした。
う~ん、
『先輩として後輩にできるところを見せたい』
という誘惑はなかなか危険なものがあるな~、と心の中で『ひっそり』と感じた出来事でした(; ̄ェ ̄)
誘惑に負けずに、エコーの画面に写っている通りに自分の眼を信じてよかったです、ホッ (>_<)
ちなみに患者様は意思疎通の困難な患者様で、手術の痕はそのときは気付きませんでした、身体診察ももっと集中してしないといけないという当たり前の教訓も得られた出来事でした(>_<)
上の写真はメタボな指導医H先生が『純粋に医学的興味のみ』で購入された本です。
腹部エコーを当てたら、『見えるはずのないもの』が見えるかも~(^◇^)